2010年12月29日水曜日

フレンチ・コネクション

1971・アメリカ
監督:ウィリアム・フリードキン
製作総指揮:G・デイヴィッド・シャイン
製作:フィリップ・ダントーニ
脚本:アーネスト・タイディマン
出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、マルセル・ボズッフィ、トニー・ロー・ビアンコ

 男臭すぎる映画特集第2回『フレンチ・コネクション』。超がつく固ゆで映画です。本作は『エクソシスト』など知られるウィリアム・フリードキン監督によるもので、第44回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞の5部門を受賞した傑作です。実際の麻薬事件をモデルにしたノンフィクションで、マルセイユとニューヨークを結ぶ麻薬取引のルートを背景に、“ポパイ”ことドイル刑事が麻薬組織壊滅に執念を燃やす姿を描いています。『フレンチ・コネクション』という題名もフランスのマルセイユとの麻薬ルートを意味しています。

 と、このように内容を一言で説明してしまうと、よくある刑事モノじゃん、と思うでしょ。でも、この映画は違うんですよ。

 それは、リアリズムです。

 そもそも、虚構の世界である映画とリアリズムとの関係は、切っても切れないものです。もちろん、リアリズムに徹した映画の方が面白いかというと必ずしもそうとは限りません。リアリズムに徹しながらも娯楽性をも兼ね備えるのはなかなか難しいのです。とは言え、最近のハリウッド映画の刑事物では『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』ぐらい娯楽に徹すればまだしも、中途半端にリアリズムを持ち込んだくだらない作品の多いことにうんざりさせられます。その点、スティーブン・ソダバーグ監督の『トラフィック』あたりは、久々にリアリズムに徹しながらも娯楽性を兼ね備えた貴重な作品でした。

 ではこうしたリアリズム追求型刑事物の原点は何か?と考えてみると、それは文句なしにこの『フレンチ・コネクション』ということになるでしょう。つまり、本作『フレンチ・コネクション』は、虚構とリアリズムを絶妙に融合させています。ジーパン履いたおっさんがバイクに乗りながら、真っ昼間にショットガンぶっ放す(石○軍団のように)、ありえへんやろと言ってしまうような非現実感は排除され、かといって、リアリズムを徹底しすぎて変に社会派ぶってもいない。だからこそ、アクションシーンは手に汗握る。

 そして、主人公ドイル。『フレンチ・コネクション』の主人公、ドイル刑事の描き方はどう見ても英雄とはほど遠いものです。言葉使いは4文字言葉の連発だし、着る物のセンスは最悪だし、マゾの気はあるし、犯罪者には情け容赦なく暴力をふるうし、・・・。ワイロを受け付けていないのが、不思議なぐらいです。この映画の主人公、二人の刑事が実在の人物だと知らなかったら、とてもこの映画がリアリズムに徹しているとは思えないかもしれません。
 ところが、この映画のモデルとなった刑事のお母さん(実際の事件を担当し、モデルとなった刑事はアドバイザーとして、制作に協力しています。)が、この映画をみて、「なんだ、どうせ本物の刑事を使うなら、うちの息子を主役にして欲しかった」と言ったそうです。いかに、ジーン・ハックマンの演技が真に迫っていたのか、さすがアカデミー主演男優賞をとっただけのことはあります。

 

 高架橋下のカー・チェイスシーンや寒空での鬼気迫る尾行シーンは、リアリズムとの融合が可能にした尋常ではない緊迫感に包まれます。映画ファンならずとも一見の価値ありです。      (CG使わずにここまで魅せるかねっ!!)


 『ブリット』、『ダーティー・ハリー』などとともに映画史に燦然と輝く刑事アクションの金字塔であり、同時にドキュメンタリータッチのパイオニア的映画と言えるでしょう。

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