2014年1月1日水曜日

2013年映画ベスト10、選びました。

2013年も映画観ました。今年は2012年のように『アベンジャーズ』やら『ダークナイト・ライジング』のお祭り映画こそ少なかったものの、尖ってて素敵な映画が沢山公開された気がします(ここ最近では一番くらいじゃないかな)。そんな年なので10本選ぶのはやっぱり難しい。でもやりますよ、楽しいから。



第1位 『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』  

1本に3ジャンルの映画が凝縮した怪作!



 
迷いましたが、この映画です!

監督は『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス 。
前作では、主人公が朝、目覚める瞬間を撮るために、本当に俳優を眠らせて、スタッフはその周りで彼が起きるまで待機したという気合いの入りまくった人です。

【あらすじ】
天才ライダーのルーク(ライアン・ゴズリング)は移動遊園地でバイクショーを行う刹那的な日々を送っていたある日、元恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。彼女がルークとの子どもを内緒で生んでいたことを知ると、二人の生活のためにバイクテクニックを生かして銀行強盗をするようになる。ある日銀行を襲撃したルークは逃走する際、昇進を目指す野心的な新米警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)に追い込まれるが・・・。 

とにかく見応えが凄い。 映画が三部構成で話が進むのですが

《アメリカンニューシネマ的犯罪モノ》
我らがライアン・ゴズリング扮するアウトローの悪かっこよさったら。
  ↓
《警官汚職モノ》
レイ・リオッタ登場!もう何も言いません。悪いことします。
  ↓
《青春映画》
15年後、父の因果を息子が受け継ぎ・・・

とジャンルごとスライド。

通常視点がぶれて散漫になるところを、
緻密な脚本で伏線を張り合い、
編集で引き込み、
3ジャンルが互いに共鳴する1つの大河ドラマとして紡いでいく。

こんな映画初めて観ました。

血に抗い、飲み込まれ、また乗り越えようとする父子たち。
それぞれの運命に並走する2時間44分。2013年度1位はこの映画しか考えられません。

 





第2位 『ウォールフラワー』  

青春映画が好きなんです。





「わかりやすい格差を描いたアメリカの青春映画の99%がウソだ」。
自伝的な小説を自ら監督したスティーブン・チョボスキーはいう。 

『ウォールフラワー』には、経済的な格差や外見上の美醜の差など、これまでのアメリカ映画の定番であるスクールカーストのイジメの構造は出てきません。

むしろ恐ろしいのは、自分から何も発信しない主人公チャーリーを透明人間のごとく扱う周囲の「無関心」です。 2012年の『桐島、部活やめるってよ』でもそうでしたが、スクールカーストの本当に正体はこの「無関心」なのかもしれません。

主人公に似ているとは言えないけど、僕も気持ち悪くて不気味な奴だったと思います。

「壁の花」である主人公が学校でどう居場所を作っていくのか、文化系少年の内面をえぐった通過儀礼の物語は涙なしでは見られません!

 『あの頃、ペニー・レインと』で泣き、『桐島、部活やめるってよ』で救われた人は必見です。言葉では表現できないくらい大好きな映画。

青春映画が好きで何が悪い。

 





第3位 『ゼロ・グラビティ』    

映画史の最先端に位置する名画




どっかの映画評論家が行っていました、映画の定義があるとしたら、それは「追体験」らしいです。

 主人公の体験を観客が映像を通して疑似体験するエンターテイメントメディア。 

確かに、映画史とは、如何に疑似体験精度を上げられるか、名だたる映画制作者たちの努力の歴史でした。

リュミエール兄弟が写真を動かし、
ジョルジュ・メリエスが映画に「物語」を持ち込み、
アラン・クロスランドが俳優に「声」を出させ、
ヒッチコックがワンカットで映画を撮り、
スピルバーグがCGで恐竜を蘇らせ、
ジェームズ・キャメロンが3Dで空間を創った

『ゼロ・グラビティ』という企画自体が、先人たちが築いた功績と現在の映像技術を駆使して 「宇宙を観客に追体験させること」に限りなく近づいた映画史への挑戦そのものであり、それに成功した事例と言えるでしょう。

今まで観たどんな映画体験にも分類できないのは、映画史の最先端に立った一本だからだと思います。






第4位 『キャビン』  

これはB級映画じゃない!B級映画批評的A級映画だ!  




夏休み、森の小屋(キャビン)にやってきた大学生男女5人。人里離れたこの小屋はどこか不気味だ。へんぴな山小屋にイケてる男女が集まってムフフな休日を過ごしていると、彼らを待っていたのは身の毛もよだつ運命だった!?

5万回は繰り返されたこのパターンですが・・・。 

ホラー映画を新しいステージに押し上げた知恵と勇気に拍手です。 

ネタバレ厳禁な作品なのでこれくらいに。





第5位 『クロニクル』




「男の子」なら誰しも妄想したことを、主観映像方式で映画化。

 制作者自らがスーパーヒーロー映画への解毒剤のつもりで作ったと語る本作。  この映画は『キャプテン・アメリカ』よりも『キャリー』に近いのかもしれないです。

普遍的でありながら、超能力を自撮りに使うあたり、 ソーシャル時代の思春期心理の描写としてもなるほどなって感じでした。

ちなみに主演のデイン・デハーンは、『アメイジング・スパイダーマン2』のハリー・オズボーン役に決まったそうです。

普通に、超おもしろい!未見の男子、TSUTAYAへ!

 





第6位 『凶悪』




 この作品自体が凶悪なほどの面白さ。 

イーストウッド、コーエン兄弟、ポール・トーマス・アンダーソンの感性を日本映画で味わえるなんて。 

本作は殺人を犯した「凶悪犯」だけを描いているのではなく、 正義の裏に巣くう、もうひとつの「凶悪」と、 それらを囲む善人たちの「凶悪」までも踏み込んでいます。

詳しくは10月27日の投稿を。

やばいです。


 






第7位 『そして父になる』




監督・脚本・編集、是枝裕和。 

演じているとは思えない子供たちの実在感、
セリフではなく映像で引き込む演出、
緻密の計算され尽くされ脚本、
是枝作品という看板を裏切らない極上の逸品。

河原の会話シーンなど、グッと引き込む画づくり。
深津絵里、リリーフランキーの大和ハウスのCMを手掛けた 瀧本幹也氏の撮影も素晴らしい。 

映画マニアも、そうじゃない人も、クロスオーバーして 映画の話ができたり、一緒に観に行けたり、 そういった意味でもなかなかない 素敵な映画だと思います。








第8位 『横道世之介』 


懐かしさを演出の材料につかった映画とは一線を画した、
「懐かしさの正体」に迫る途方もなく知的な傑作。

この前、桑田佳祐がテレビのドキュメンタリーで言っていました。
「大学、ぼくの人生は18歳がスタートラインだった。」と。

登場人物たちの「18歳」という、ある種本当の人生のスタートラインを僕たちは見届ける。
出てくる登場人物達の「スタートライン」と「その後の人生」。
交互に繰り返される内、大人になって全員がいつのまにか疎遠になっていると気づく。疎遠になった理由は全く説明されないが、その理由はよく分かる気がする。
自分の生活はどんどん変わり、やがて大事な人が増えて、家庭が出来て、時間を作る事を忘れ・・・人間関係も、生活とともに形を変えてゆく。

でも、心の隅のどこかに生き続けて、ふとしたときに思い出す「横道世之介」。
みなさんにも、いますよね、そんなやつ。

映画が終わったら、きっと、登場人物のように世之介に会いたくなってる。

あ、そんなこと言ってたら・・・。









第9位 『シュガーマン 奇跡に愛された男』 




アメリカでは全くの無名。一方、南アフリカでは曲がヒットし国民的アイドルとなった、という極端な落差をもつ孤高のミュージシャン「ロドリゲス」を追ったドキュメンタリー映画。 

いろんな関係者のインタビューで成り立っているのですが ロドリゲスが肉体労働していた工事現場で働く同僚のコメントがとても印象的でした。 

「世に出てる大半は凡人だ。
彼は真の詩人やアーティストの様に 不思議な才能が備わっていた。
 あいつの仕事に対する姿勢は妥協がなくて解体した後の家の だれも掃除しないようなところを一人でもくもくと掃除していた。
世の中を変えられるのは本物のアーティストだけだ・・・。
おれはあいつのことを語れるのがただただうれしいんだ」 

職業人として学ぶことに溢れた映画でした。

そう、ロドリゲス、肉体労働のアルバイトがあるからという理由でアカデミー賞授賞式を欠席したという。









 第10位 『ペーパーボーイ 真夏の引力』 



映画感の空調壊れてません?鑑賞中そんなことばかり考えてました。 

空調故障の錯覚を起こすほど、画面が生暖かく不快な空気で満ちたサスペンス映画であり、屈折した青春映画。 身体を張った名優の演技が醸し出す、そんな湿気と臭気に充てられて終始、息苦しいというか、あまり気分がよろしくない。 

マシュー・マコノヒーはドMのゲイ、
ジョン・キューザックは性犯罪者、
ニコール・キッドマンはビッチのおばさん、
ザック・エフロンはそのビッチのおばさんに恋する童貞。

ザック・エフロンファンの女子は鑑賞注意です。
変態映画だけど、忘れられない方が勝ち!

 




よーし、2014年、映画観るぞ。