2010年12月6日月曜日

ガタカ

 
1998年・米 上映時間 112分
監督:アンドリュー・M・ニコル
製作:ダニー・デビート、マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェール
音楽:マイケル・ナイマン 撮影:スラヴォミル・イジャック
衣裳デザイン:コリーン・アトウッド
出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、アラン・アーキン、ジュード・ロウ
   ローレン・ディーン、ゴア・ヴィダル、アーネスト・ボーグナイン
   ブレアー・アンダーウッド、サンダー・バークリー、トニー・シャローブ
 
 
記念すべき第一回の作品は、『ガタカ』です。自分がこの作品をはじめて出会ったのは、なぜか高校の時の現代社会の教科書からでした。しかし、初めて鑑賞したのは、大学に入って映画浸りの生活が始まってからなのだが、正直言って、「こんな素晴らしいSF映画が存在したなんて・・・」という衝撃でした。

 まあ、僕のこの作品との出会いは置いといて、あらすじですが、以下になります。

 「そう遠くない未来」と最初にクレジットされる。生まれた瞬間に細胞診断がされ、遺伝子の分析で、寿命や能力が分かってしまう時代。子供はデザイン・チャイルドがむしろ「正常」とされ、操作されずに誕生した男子ヴィンセントの運命は30歳で心臓疾患で死亡というきびしいものだった。しかし、男の子は宇宙旅行の夢を持つ。もっとも選ばれた者が宇宙飛行士になれるのだ。男の子にはデザイン・チャイルドの弟があった。いつも弟に負ける毎日だったが、遠泳競争で勝った日をきっかけに、兄(イーサン・ホーク)は「不適正」者として自信を持って生活し始め、やがて事故で車椅子生活を余儀なくされた遺伝的に優秀な青年ジェローム(ジュード・ロウ)の協力を得て、身分を詐称し、宇宙飛行訓練施設「ガタカ」へ潜入する。
 彼は抜け毛やムダ毛を完全に処理し、尿や血液もジェロームのものを利用して、検査を通過する毎日で、とうとう土星の衛星タイタンへの飛行士として選出される。ところが、その矢先に所内で殺人事件が発生、徹底的な捜査により、彼のマツ毛が採取され、不信な潜入者ヴィンセントは殺人の容疑者として指名手配されてしまう。
 刻々と迫るロケットの発射日、徹底的な捜査は徐々に彼を追い詰めていく。不審な様子に気づいた女子職員アイリーン(ユマ・サーマン)との恋愛もからんで、映画は静かにサスペンスを盛り上げていく。   とまあこんな感じです。
 
 映画『ブレードランナー』(監督リドリー・スコット)は、酸性雨の降りしきるじめじめした暗い都市と、入り乱れた人種が息苦しく蠢く空間を、来たるべき近未来世界としてわれわれの前に提示し、 科学の発達と人間の幸福は比例するのかを描いたに対し、本作監督アンドリュー・ニコルもまた、近未来を語る映画作家であり、そこでは科学の進歩とそれに伴って浮き彫りになる世界の不条理性を徹底的に描き出しています。

 自然出産で生まれ、自分の遺伝子という壁を越え、宇宙への旅を目指す「不適正者」のヴィンセント、超人的な体力、知力を生まれつき備え持つが車椅子生活を余儀なくされた「適正者」のジェローム。挫折しか経験のない人間と挫折を知らない人間二人の行きつく先は・・・

 持って生まれたその人の特徴や、「運命」は変えられるものではないのかもしれません。もちろん、いくら努力しても自分だけではどうにもならない事、どうしようもない事はたくさんあります。ですがそれも含め、欠点を探すよりも何が自分に出来るのか、何をしたいのか、どう生きて行きたいのかを考えるのに熱心になる事により、与えられた世界の中で「よりよく生きる」という選択は充分に出来るものではないかと思います。
 欠点であれなんであれ、与えられたものをフルに使って自分の夢を追うヴィンセントの姿は、夢の無かったジェロームだけでなく、僕にも夢を与えてくれました。
 
 また本作は、その映像美とマイケル・ナイマンの音楽も筆舌に尽くしがたい素晴らしさです。
 冬の寒い夜に鑑賞する。そんな映画です。

1 件のコメント:

  1. 欠点を探すよりも何が自分に出来るのか、何をしたいのか、どう生きて行きたいのかを考えるのに熱心になる事により、与えられた世界の中で「よりよく生きる」という選択は充分に出来るものではないかと思います。

    こういう発想を持てるような人物になりたい。とても好感が持てる文章でした。ありがとう。

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