2011年3月21日月曜日

恋はデジャ・ブ


1993・アメリカ
監督:ハロルド・ライミス
製作総指揮:C・O・エリクソン
製作:ハロルド・ライミス、トレーバー・アルバート
脚本:ハロルド・ライミス、ダニー・ルビン
出演:ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル・・・
 
 高慢な人気気象予報士フィル・コナーズ(ビル・マーレイ)は田舎町であるペンシルベニア州パンクスタウニーにローカル番組のロケで来た。毎年2月2日に、ウッドチャックが自分の影を見て冬眠するかどうかを決定しその結果によって豊作を占うという聖燭節の祭、田舎行事で彼には退屈で耐えられないし、当然身も入らない。嫌々ながら一日を終え、都会への帰途、天候の急変で田舎町に泊まることになった。翌朝、彼を待っていたのは昨日と同じ2月2日だった。また翌日も同じ2月2日。この永久的なループに留め置かれたフィルは脱出するため、試行錯誤を繰り返していくが・・・。


 こんにちは!! お久しぶりです。「シネマ秘密基地」も本日から映画評を再開したいと思います。「映画で心の灯火をともそう」というテーマのもと、観ると世界の見方が今よりちょっと良くなる映画を取り上げていこうかと思います。

 というわけで、『恋はデ・ジャブ』。本作は一世を風靡した『ゴースト・バスターズ』の脚本を手掛けたハロルド・ライミス監督によるもので、自己中心的で他人への思いやりのかけらもない天気予報官フィル・コナーズが取材に訪れた田舎町で、どういうわけか、同じ日2月2日を何度も何度も繰り返すはめに陥ってしまう物語。

 喜劇俳優ビル・マーレイのどこかオフビートな魅力がたっぷり詰まっていて、ただなんとなく観ているだけでも笑えて、楽しい気分にさせてくれる秀作コメディであることは間違いないでしょう。


 しかし、この作品は同じ日を繰り返すというループに閉じこめられたフィル(ビル・マーレイ)の姿を通して、観客に「人生とは何か」、「あなたはいかに生きているのか」という鋭い疑問符を、ニーチェの哲学思想も巻き込んで、投げかけます。おかしくも、ものすごく恐ろしい映画です。でも、問いかけには終わらずに、どうしたらいいのかの答えまで提示するのです。ここがスゴイ。

 では、どこが「恐ろしい」のか。フィルは,最初のうち,次に日には元に戻るのだから何をやってもいいのだということで、暴走、暴食、セックス、果ては泥棒と無軌道に過ごします。まぁ、ここら辺ならまだかわいいもので、人間なんでも許されれば悪いことをするに決まってますから・・・。でも、やがて彼は、取材に同行しているプロデューサーのリタが好きだということに気付きます。繰り返しを利用して相手の好みを学習し,部屋まで誘うことに成功しますが、あわやというところで失敗。その後は何度繰り返しても、もっと手前で失敗してしまう。最終的にはリタから、「あなたは自分しか愛してないのよ。そんな人は絶対に好きになれない。」なんてことを言われてしまう始末。もはや、絶望して思いつくあらゆる方法で何度も自殺を試みるます。でももちろん同じ一日の中によみがえってしまう・・・。もうここまでくると発狂することも許されない究極の拷問です。そんなものを見せられたら観客としてはものすご~く気分が悪くなります。
 死ぬことさえ許されない状況、これからどうする・・・。   ここにこそ本作の最大の魅力があり、「あなたはいかに生きるのか」という問の答えの部分になり、同時に以下に述べるニーチェの永劫回帰思想への回答に当たる部分となります。

 この映画の背後にあるのは、ニーチェの思想と言われています。(これは監督自身が語っています)。この「もし、同じ繰る日も繰る日も全く同じ日だったとしたら、人はどうするのだろう。」という問いは、ニーチェが『ツァラトゥストラはかく語りき』で描いた《永劫回帰》という哲学思想らしいのです。この《永劫回帰》、実はニーチェ先生自身も完全には理解できなかったという難解な思想だそうです。そこで、映画評論家の町山智浩氏は「この作品はニーチェの永劫回帰思想をたったの100分で表現しきっていると言っても良いのではないだろうか。」と賛辞を述べています。

 
 この考えを現実に当てはめるならば、


 僕たちは来る日も来る日も同じ場所で,同じことの繰り返しでしかない退屈な毎日を生きているし、生きて行かなければならない。でもそんな同じような毎日を、退屈だと嘆いて愚痴をこぼしたり、人の所為にして文句を垂れるのは簡単だけれど、だからと言って、大概の人は自ら進んで変えようと行動をしたりはしない。だから、ニーチェは、そんな一般大衆を畜群と罵り、その中から一つ抜き出て、自分というものを確立し貫き、同じ日々が続いたとしても、その瞬間、瞬間を全力で生き、それはそれでOK!それも人生!と言える人こそ超人と呼び、その超人になる必要があると説きました。  

 ゆえに、この『恋はデジャ・ブ』の中ではフィルが毎日毎日同じ2月2日という日を永遠と繰り返すという極論で描かれていますが、それによって《永劫回帰》を表現し、そんな「同じ日」を繰り返す中でも、自らを変える力は、自らが持っているし、自分の意志や行動一つで、「同じような日」にも花を咲かせることができるということを観る者に気付かせてくれます。
 勿論コメディとして笑える素敵な映画なんだけれど、人生をただ生きるのじゃなくて、よりよく生きる為の在り方を、教えてくれるような素晴らしい素晴らしい傑作と言えるのではないでしょうか。

 この映画を見終わったときの気持ちをずっと忘れないでいられたら、僕の人生もすごーく密度の濃いものになるだろうな。 

 

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