すごい映画をみてしまった。
しばらく遠のいていた、この映画の面白さを伝えたい!という欲望を掻き立てらた傑作と出会った。ここで書かなくていつ書くか、という状況である。
『カメラを止めるな!』
SNSのタイムライン上ではその絶賛投稿を多く目にしていた。
低予算自主映画だし、どうせ好き者が好むカルト映画だろうなあ、と思っていた。
実際見てみるとこれが全然違う。真逆。
映画にしかできないエンタメを極限まで突き詰めた笑って泣ける映画だ。
これが宣伝文句じゃなく、「本当に」笑って泣ける。上映時間の間で、この映画ほどに感情の移り変わりの幅が広い映画はあるだろうか。僕は少なくとも見たことがない。
しばらく遠のいていた、この映画の面白さを伝えたい!という欲望を掻き立てらた傑作と出会った。ここで書かなくていつ書くか、という状況である。
『カメラを止めるな!』
SNSのタイムライン上ではその絶賛投稿を多く目にしていた。
低予算自主映画だし、どうせ好き者が好むカルト映画だろうなあ、と思っていた。
実際見てみるとこれが全然違う。真逆。
映画にしかできないエンタメを極限まで突き詰めた笑って泣ける映画だ。
これが宣伝文句じゃなく、「本当に」笑って泣ける。上映時間の間で、この映画ほどに感情の移り変わりの幅が広い映画はあるだろうか。僕は少なくとも見たことがない。
何も知らずに見た方が絶対にいい映画だけど、見ると誰かに話したくてたまらなる映画です。
ネタバレ前提で書いていきますので、映画をご覧になった方だけ読んで頂けると嬉しいです。
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映画を見た方だけスクロール。
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まとめると、「多数で何か1つのものを作る」という行為の悔しさも楽しさも知っていて、それでも全部肯定して、思いっきり抱きしめる、みたいな映画でした。
視点ずらし構造の気持良さよ。
なんといっても見たことない物語構造が本当に本当に気持ちがいい。
「視点ずらし」という物語の構造設計がこの上なく巧いのです。
ここで、映画の魔法「視点ずらし」について、少し話したいと思います。
映画はカメラがとらえた一点から世界に没入させるメディアです。なので、意図的にそのカメラの視点をずらすことで、今まで見ていた世界とは別の景色がぐわっと広がって見えてきます。それにより、物語にテクスチャーが生まれ、観客の心を大きく引き付ける効果があります。
ずらし方には幾つか種類あります。主に以下の3つだと思っています。
■ 別の場所に視点を置く
■ 視覚野を広げる
■ 見る/見られる立場を逆転させる
の3つ。
1つ目の「別の場所に視点を置く」は、その名の通り、同じ事象を切り取ることで物語を立体化する手法です。
例を挙げると、『桐島、部活やめるってよ』。イケていないグループとイケているグループの視点を切り替えることで、強い推進力で、学校生活の内実に迫っていきます。
(写真:実はこいつらが一番イケている事に気づく瞬間)
2つ目の「視覚野を広げる」は、急激に俯瞰視点に切り替え、一気に物語世界を拡張する手法です。
例えば、映画ではないのですが、『進撃の巨人』です。ここ最近の展開です。これもネタバレになってしまうので深く言及しませんが、読んだことある方なら分かるかと思います。
3つ目の「見る見られるの立場を逆転させる」、それまで「見ていた」と思った主人公が実は「見られていた」ことが明らかになる展開です。
例えば、『ソウ1』のオチや『ニュー・シネマ・パラダイス』の映写技師アルフレードの粋な計らい、等です。
(写真:映画史上最も粋な計らいを受けた主人公)
「視点ずらし」は広告の映像企画の世界でもよくつかわれる技法なのですが、個人的には尺が長い映画の方がよりダイナミックに機能すると思っています。
(上げた例はいずれも傑作と言われる映画で、まさに、言うは易し行うは難し。緻密な伏線・俳優の演技・テンポいい編集、様々な歯車がかみ合わないと成立しません。成立させるのは、本当に難しい、、)
前置きが長くなってしまいすいません。
そんな中、『カメラを止めるな!』は2番目の「視覚野を広げる」という手法を巧みに使っています。古今東西、この手法にうまく使っている映画は観たことないくらいにまでに。
そもそも映像制作自体、撮影しているカメラの背後まで視覚野を広げると、実に滑稽です。
自分も動画の撮影等で収録現場に入る時、「あ、そこ人力でやるんだ笑」みたいなことめちゃくちゃあります。
1幕の映像が全部伏線になっていて、2幕目・3幕目に視覚野を広げた時、それが全て回収されていく気持ちよさは凄まじいものがあります。
そもそも伏線回収は、「観客の自覚していない伏回線収こそ気持ちがいい」のです。
伏線かもなあと思っていたことが実際に伏線回収されても、大して気持ちよくないのです。ですが、この映画、そのほぼ100%が、伏線だと自覚していない伏線回収です。
「ええ~ここ伏線だったんだ!」という気持ちよさ、すごすぎます。あと、伏線回収の度に爆笑が起こる映画は初めて観ました。笑
出演者全員のキュートさよ。
濱津隆之さん演じる、プロデューサーから「早い・安い・そこそこ上手い」と評される、主人公の監督。
監督志望の勝気な娘。サイコパスな元女優の母。適当なプロデューサー。もっと適当なチーフプロデューサー。
殆どが無名な俳優さん・女優さん。ただ、全員がこの人以外考えられないってほどハマっているのです。各キャストのパーソナリティに合わせて役柄を変更して行ったようです。
パンフレットのインタビューでは、上田監督が今作を「諦めることを肯定する映画」と語っていました。確かに主要キャラクターは「何かを諦めている人」でした。その理由はこの映画が「ものづくり」をテーマにしているからだと思います。
映画などの1つのモノを複数で制作する時、何かを諦めなくてはいけないことは絶対あって、でも諦めて行く中で、一番良い物を作ろうとしていく、その行為こそ映画作りである。
諦めることを肯定する映画でありながら、諦めないことを説く映画、です。
なんて愛おしいのだろう。
あれ、おれ泣いてる。
世の中には面白い映画がたくさんあって、正直もう新しく残された面白い企画はないんじゃないかとも思ったりします。自分がやっている仕事も同じです。そんな自信がなくなる時は沢山あります。
でも、まだまだ未開拓の桃源郷はあって、これからも面白い企画は生れ続けるんだろうなと。アイデアを信じる勇気をもらいました。
制作者の皆様、この映画を作ってくれて本当にありがとうございました。