2011年12月29日木曜日

僕が選んだ2011年映画ベスト10

今年はベスト10やります。僕個人今年、都心のキャンパスに移動になったこともあり、劇場で見た映画の数が激増した一年でした。大学より映画館で多くの時間を過ごした一年でした。はい。不良大学生です。映画はやっぱりあの暗闇の中スクリーンでお客さんと一緒に共有してはじめて完結するもので・・・。

まぁ、御託はどうでもいいのでさっそくベスト10行きます。映画をこっちのが凄くてこっちが凄くないとかするのは個人的に嫌いなので、順位はあまり気にしないでください。ベスト10、すべての作品が自分の中でほぼ同等に傑作です。あと、当たり前ですが、映画の完成度とか素晴らしさってことより、個人的好みで選んでいます。どうぞご了承を。




第1位 『ミスター・ノーバディ』(4月公開)


人生の選択。幾重にも枝分かれしたパラレルワールドを極上の映像美でもって体験させる逸品。SF叙事詩の最高傑作。僕にとってこの作品以外ベストワンに考えられません!

「人間というのは不思議なもので,確定したはずの過去に『別の解釈可能性』があり,そのとき『別の選択肢をとった場合の私』というものがありえたと思うと,なぜか他人に優しくなって,生きる勇気が湧いてくるんです。」(「うほほいシネマクラブ」 内田樹著)

人生は選択の連続。細かな決断の結果が、今の自分だと思う。進学に恋愛。これからは就職、結婚・・・。小さい選択であっても、もし自分があの時別の選択をしていたら、違う決断を下していたら、今とは極端に異なる人生を歩んでいるのかもしれない。そしてこれから長い人生そうだ。僕自身の人生でも、まだまだ二十年しか生きてないけど、小さな選択大きな選択の積み重ねをしてきました。

でも、もし別の高校に進学したとしたら・・・。
もし別の大学に進学していたら・・・。
もし映画制作部に入っていなかったら・・・。
もしゼミに入っていなかったとしたら・・・。
もしあの時、あの入試問題に正解してしまっていたら・・・。
もし一人旅であの時、電車を降り過ごさなかったら・・・。

おおお!そんなん、一体どうなっているんだあああ!?

こんな21の若造でさえも、そんな思弁的な随想に耽ってしまう。この『ミスター・ノーバディ』という作品は。


『ミスター・ノーバディ』は、「人生の選択」をテーマにした、巨大SF叙事詩です。お話は
2092年、人間は科学の力で不死の人生を手に入れていた。突然目覚めた108歳のニモ(ジャレッド・レト)は、他の人たちと大きく異なっていた。彼は永久再生化を施していない、世界で唯一の「死ぬことのできる人間」だったのだ。もはや天然記念物扱いの彼の一挙一動は、全世界に生中継されていた。そんな折、ニモのもとにやって来たひとりの新聞記者が、ニモの過去に迫るべく質問を始めた。ベッドに身を横たえたニモは、おぼろげな記憶の数々をよみがえらせていくが、そこには虚実の境が見えない不思議な世界が広がっていた・・・。
というもの。

『インセプション』で描かれたのが「階層世界」のならば、『ミスター・ノーバディ』は「並行世界」つまりパラレルワールドのお話。

つまり、1の道と2の道があった場合、通常、映画が描くのは、主人公が「選択」したどちらか一方の道だけである。ところがこの映画は、1の道も2の道も両方描く。さらに現れた分岐点では、3の道も4の道も描く。終わってみれば、枝分かれして、12の道(人生)を描ききってしまうのです。

樹先生のおっしゃる通り、「確定したはずの過去に『別の解釈可能性』があり,そのとき『別の選択肢をとった場合の私』というものがありえたと思う」と必然的に、今の自分の状況や周囲の人が非常に尊い存在であることに直面するんだなあと思います。

う~ん。まあ、でも、僕個人も、未だにこの巨大な作品を完全には理解することはできていない状態ですからね(汗)その証拠にこの1位の記事がイチバン散雑してますから(笑)

少なくともこの映画は、簡単に感動を与えてくれるタイプの作品でも、安易に講釈をたれるタイプの作品でもありません。観客側から積極的にアプローチをかけて、その真意を読み解くことが要されるタイプの作品です。パラレルに展開される12の物語を破綻させることなくまとめあげたジャコ・ヴァン・ドルマン監督の鋭い論理的思考と、芸術性に優れた絵作りに圧巻でした。右脳にも左脳にも訴えかける力を持っています。

でも、それは、万人受けするという意味ではありません。

好き嫌いは分かれる映画でしょう。でも、脳の全領域をフル稼働させた者だけに、ようやく示唆めいたものが見えてくる。そういう映画なんだと思います。手ごわいですが、極上の余韻が味わえます。

種類としては、『エターナル・サンシャイン』、『バタフライ・エフェクト』、『インセプション』、『落下の王国』あたりが好きな人は必見です。



もし、あの時、あいつがこの映画を薦めてくれなかったら。あの時、この映画のレイトショーを渋谷に観に行かなかったら・・・。

というわけで、2011年僕の選んだベスト1はジャコ・ヴァン・ドルマル監督作品『ミスター・ノーバディ』でした。この作品に出会えたことを心より感謝します。

これだから、映画はやめられないんだよな~。






第2位 『127時間』(6月公開)


これは過酷な大自然に打ち克つスペクタクルなどではありません。渓谷で落石に右腕を挟まれ、身動きできなくなったひとりの青年の5日と7時間。被写体はほぼ岩と男だけ。これを劇仕立てにしようというのだから、まさに冒険映画ならぬ映画的冒険ってなわけです。
ってな感じで、主人公が一歩も動かないアクション映画が『127時間』。これほど変化に乏しい素材もなかなかありませんよ。そんでもって、そもそもこのストーリーは、「予想外」が起こりにくい性質のものです。おそらく100%、誰もが予想した通りにしかならない、ならざるをえないシナリオです。

それを珠玉の映像技巧でもって極上のエンターテイメントに昇華させたダニー・ボイルの手腕は、どう考えたって認めざるを得ません。
つまりところ、彼の映像美学は決してギミックにとどまるものでは無いってことです。
例えば、瞬く間に活写される冒頭。それが表現するのは、都市の喧噪を逃れ自然を求める、いや、孤独を渇望するごく普通の青年の姿です。それは観る者に解放感を与えた直後、苦痛を共有させる仕掛けとして効果的なだけでなく、後々意味を帯びてくるのです。そこから流れで、迫真の一人芝居によって、あがき苦しむジェームズ・フランコは本当に不憫というか、皮肉というか・・・。

MTV風と揶揄されるダニー・ボイルの映像表現ですが、この作品ではそれがポジティブな《生》の象徴となっているのです。生きることへのダイナミズム。この作品はそれに満ち満ちています。
最後、アーロンが脱出後の叫び「HELP!」には、生きることへの渇望とイニシエーションを終えた青年の成長が込められているのだと思いました。う~ん。あの祝祭感は号泣必須ですね。
夏に一人旅を計画していた僕にとっては、その印象は骨の髄まで刻み込まれてしまいました。


あ、あと「2011年タイトルの出方のかっこよさランキング」があったとしら、間違いなく本作が堂々の1位ですよ~。






第3位 『ザ・タウン』(2月公開)


強盗のリーダー、ダグ(ベン・アフレック)が、ある女性を愛したことによって足を洗おうとしますが、仲間との繋がりのため対立を深めていくさまと、さらに追及の手を緩めないFBIとの手に汗握る攻防を描いた作品でした。
第一作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に続いてのベン・アフレックの監督二作目。『ゴーン・ベイビー・ゴーン』でクリント・イーストウッドの継承者と言わしめたベン・アフレック。今作で本当にイーストウッドを継承するに値する大器である思わずにはいられませんでした。

つまり、自分をかっこよく撮る天才ってなわけです。

アクション、 サスペンス、 ロマンス、 ドラマ・・・。散漫になりがちな様々な要素を紡いでいるのは徹底した緊張感。緊張に緊張を持続させるプロットが秀逸すぎます。(脚本もベン・アフレックは噛んでいます。)「どうせ犯罪者だろ」 という心理から 「必ず生きて欲しい」そんな気持ちに変化させるプロットは実に巧みとしか言いようがありませんね。

描かれるテーマは、社会に背く仕事、仲間との仁義、惚れてしまった堅気の女・・・。『ザ・タウン』のあのラストは、フレンチノワール、香港ノワール、東映ヤクザ映画、スコセッシ作品、マイケル・マン作品など連綿と受け継がれるテーマへの独自解釈と回答を提出なのではないかと思ってしまうのです。う~む、ベン、やりおるな。

あと、アメリカ映画ファンとしては、主人公ベン・アフレックと凶悪な相棒ジェレミー・レナーの関係は、スコッセシ黄金期のロバート・デ・ニーロとジョー・ペシを重ねずにはいられませんでしたね。






第4位 『ミッション:8ミニッツ』(10月公開)


『月に囚われた男』のダンカン・ジョーンズ監督二作目。デヴィット・ボウイの息子!と宣伝される彼だが、ダンカン・ジョーンズの父デヴィット・ボウイと言われる日も近いかもしれない。
僕がこの作品を鑑賞したのは実は8月。公開前です。というのも、一人旅からの帰りの飛行機の中で鑑賞しました。航空会社がブリティッシュ・エアウェイズだったから。何もすることのない機内で、何の気なしに観たら・・・

なんと、まぁ、近年稀なSFの傑作ではないか!
2週間の禁映画生活からの思わぬ大傑作ではないか!
飛行機の中でひとり大興奮ではないか!

そんな感じで1人エキサイトしていたら、隣に座っていたイギリス人の少年とCAさんに白い目で見られてしまいました。このジャパニーズはクレイジーなんじゃないかと。

「映画通ほど騙される」コピーに偽りなしです。オチの感想は未見の方のために言いません。

ありきたりなオチなんじゃないかと期待以上に不安先行で鑑賞してください。どうせ騙されないよなどと片意地張って鑑賞してください。そんな感情も見事に破壊してくれますから。

是非この作品のスピード感にぶっ飛んでください。

前作『月に囚われた男』も傑作、今作『ミッション:8ミニッツ』も大傑作。恐るべしダンカン・ジョーンズ。みなさん、これからはデヴィット・ボウイを宣伝するとき「ダンカン・ジョーンズの父。」と言いましょう。






第5位 『ブラック・スワン』(5月公開)


いや~~~、映画ってほんっっっっっっっっっっっとうにおもしろいっすわ。

映画の可能性の幅を見せつけてくれた、そんな5月でした。

『レクイエム・フォー・ドリーム』、『レスラー』のダーレン・アロノフスキー監督。彼の真骨頂は痛ーい、痛ーい神経逆撫でアバンギャルド演出。今作は、その独特の演出&観る人がナタリーと同化したかのような錯覚に陥らせるストーリーテリングとが相まって、もう五臓六腑を鷲掴みにされるようなゾクゾク感と衝撃でしたね。

ラスト、最強のカタルシス。エンドロールが終わっても、アワアワ言って席を立てない自分がいました。

ナタリー・ポートマン。僕ら世代、『スター・ウォーズ』新三部作から見守ってきたと勝手に自称します。そんな僕らのナタリー。見事マスターベーションをやってのけた僕らのナタリー。僕らは彼女にスタンディングオベーションを捧げます。






第6位 『50/50』(12月公開)

ご多分に漏れず『インセプション』と『(500)日のサマー』でジョセフ・ゴードン・レヴィットにやられてしまったクチです。彼が主演ときたら見逃せない。そんな今日この頃です。

それに、セス・ローゲン共演ときたら、もうね・・・。

まず、特筆すべきは闘病映画が秀逸コメディーになっている点。悲劇の真っ最中だというのに、それを笑い飛ばす不謹慎さがそのうち実に気持ちよくなってくる。同じ闘病仲間の自己紹介シーンなども、毒のある笑いで観客を笑わせ心を解きほぐした直後に、深刻すぎる病状が明らかになるなど、落差の激しい悲喜劇のサンドイッチ構造。アメリカンコメディ、それも悲喜劇トラジコメディーの神髄を見ました。

闘病映画でありながらコメディーとして秀逸なのは、ひとつひとつの描写が本当に本当にやさしいから。それは映画が脚本家とセス・ローゲンの実体験に着想されているからだろう。つくり手の思いは映画の画面に出てしまうのです。

主人公を支える心理療法士役のアナ・ケドリックも実にチャーミング。『マイレージ・マイライフ』で新入社員役を演じていた彼女です。

完璧すぎるのは、ラストからエンドロールへの流れ。パール・ジャムのYellow Ledbetter。自然に涙がじわっと。


70年代がポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、80年代がハリソン・フォードとそれぞれの時代を象徴するアイコンとして映画俳優という存在があります。そしてジョセフ・ゴードン・レヴィットは現代という時代をよく象徴している映画俳優なのではないかと思うのです。あの透き通っているような、やりきれない微笑がどこか魅力的だったりとか。彼という存在に自分自身を投影してしまう世の中の男はめちゃくちゃ多いのではないだろうか。ご多分に漏れずボクがそうなように・・・。






第7位 『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(6月公開)


『キック・アス』マシュー・ヴォーン監督による『X-MEN』の前日譚。正直言うとあまり期待せずに鑑賞したのですが、とんでもない快作。X-MENシリーズ最高傑作でした。

X-MENシリーズは史実を織り交ぜた社会性、ミュータントに象徴されるマイノリティと差別というテーマです。そこで今回出てくるのがキューバ危機。人の心を操作し、戦闘を回避させようとするチャールズ。武器をねじ曲げ、力で人を押さえ込もうとするエリック。第三次世界大戦は、ケネディではなく、ミュータントによって回避されたと信じたくなるような、展開・映像ともに本当に見事です。

リンカーン記念館の前でチェスをするチャールズとエリックに、キング牧師とマルコムXの姿を象徴させる演出があります。僕は近年の映画内のメタ表現の中で最も美しい表現ではないか思います。
新三部作の一作目だとか。楽しみな限りです。






第8位 『ゴースト・ライター』(8月公開)


やっぱり、ロマン・ポランスキー監督はすごいや~。あははは~。

久々の巻き込まれ型サスペンス&政治陰謀型心理サスペンスの大傑作でした。名作『チャイナタウン』や『フランティック』などでも語られるように、ポランスキー監督はヒッチコック監督の正統派継承者であると言えます。そして、映画に映画的な幻想的な幻惑的な雰囲気をつくりだし、画面たぎらせることの天才であることを今作で改めて示してします。あの寒々しく、殺風景で、幻惑的なあの感じ・・・。そんなこと思っていると『第三の男』のキャロル・リードを髣髴したりして。

ポランスキーはヒッチコック+キャロル・リードぐらいのレベルに達してるんじゃないかな。

そして、あの終わり方。おしゃれすぎますよ。ポランスキーさん。






第9位 『モテキ』(9月公開)


イエ―イ! モテキ~~~~!!!


「ああ~、やっと日本でぼくたちみたいなモテない奴のための恋愛映画をつくってくれたよ。」というモテない現代サブカル男子としての個人的喜びと、FUCKなテレビ邦画に一石を投じてくれたという日本の映画ファンとしての喜びと、長澤まさみのエロさへの性的悦びからです。

ハッキリ言って映画としての完成度からしたらまだまだだし、映画的に『ラスト・ターゲット』と比べたら『モテキ』は劣ります。しかし、モテない現代男子、日本の映画ファンとしてこの映画に心から拍手を贈りたいのです。

タマフルでの放送作家高橋洋二氏の言葉を借りるなら、2011年現在でしか撮ることのできない作品をつくってくれたこと。ミューズとしての長澤まさみが自分の好きなコト、才能のあるコトを仕事にできるかという青年期独特の将来への不安と期待のメタファーとしての存在。確かにそうですね。
ってなわけで僕らの映画『モテキ』を第9位に選ばせていただきます。

物語は~、ちと不安定~~♪






第10位 『ラスト・ターゲット』(7月公開)

イチバン好きな映画俳優はだれかと聞かれたら。僕がそう聞かれたら答える一人の俳優はジョージ・クルーニー兄貴です。そんな兄貴主演で、世界的写真家で『コントロール』をつくったアントン・コービン監督の作品。

東映ヤクザ映画やマイケル・マン作品  を髣髴させる上質のハード・ボイルド作品でした。兄貴は最近ヒューマンドラマ系やコメディ映画でご活躍ですが、この作品のまた違ったかっこよさなんです。
男が惚れる男の映画!あ、ぼくにそっちの気はありませんよ。ペキンパーとかマイケル・マンとか深作欣二作品にあるあれです。あのかっこよさです。

とにかくジョージ・クルーニーがかっこいいのです。アントン・コービンはジョージ兄貴を最高にカッコよく撮ることに成功しています。女と仕事、組織と仁義とかそんな映画に狂った僕にはどストライクな作品でした。


あ、因みにぼくの部屋にはこの映画のデカいポスターが飾ってあります。






あと、その他、2011年僕が個人的に素晴らしかったと思う映画は、『BIUTIFUL』、『ミッション・イン・ポッシブル:ゴースト・プロトコル』、『宇宙人ポール』、『猿の惑星 創世記』、『リアル・スティール』、『ウィンターズ・ボーン』、『コンテイジョン』あたりです。


ではでは、2012年もよろしくお願いします!良いお年を、良い映画年をお迎えください。


よっし!2012年も映画館へ行こうっと!